長い坂道をくだると、四方を山に囲まれた平地に、臨済宗妙心寺派の大蔵山福泉寺が建っています。
この寺の創建年代は明らかではありませんが、府中(石岡市)の大掾平高幹の二男忠幹が寺を創建し、恵光和尚を招いて開山したといわれます。
大蔵山福泉寺は、江戸時代初期の大火で多くの寺宝を焼失してしまいましたが、幸い本尊の釈迦如来立像と文化財の一つ、維摩(ゆいま)の画像が焼失をまぬかれました。
福泉寺の釈迦如来立像は、鎌倉時代末期に春日仏師が製作したといわれています。 檜材を用いた寄せ木造りで、像高は等身大(165.5 cm)で、檜材の特色を生かして金箔や漆を塗らない素地仕上げになっています。
玉眼や眉間の白毫(びゃくごう)は水晶をはめ、螺髪(らはつ)と呼ばれる頭髪は、縄状に渦を巻くように刻まれており、像身の半円を描くような平行線の衣紋は実に美しく、異国風を感じさせます。また、如来像を囲むような金色の光背には、左右合わせて十二体の仏が浮彫りされています。
維摩の画像を描いたのは、中国の元の時代の因陀羅(いんだら)という禅宗の僧です。因陀羅の描いた維摩の画像には、中国の南宋時代の無準師範という臨済宗の僧が賛(画に添える詩文)をつけています。
一見しただけでは、普通の老人を描いたように思えるこの画像は、仏教的に考えると大変珍しく、貴重なものと云えます。
また、江戸時代の元禄五年(1692年)、名君として知られる水戸藩の二代藩主徳川光圀(水戸黄門)が、福泉寺に立ち寄りこの画像をみて、大変立派で珍しい画像であるが、傷みが甚だしいのでこれを修復したということが書き残されています。
毎年4月8日、一般に開帳されています。
国指定文化財(彫刻):釈迦如来立像(木造)
県指定文化財(絵画):維摩の画像
所在地:茨城県鉾田市大蔵113 TEL: